【認知症の症状】周辺症状 帰宅願望
2024/10/12
目次
【認知症の症状】周辺症状 帰宅願望
こんにちは、ヘテロクリニックの木ノ本です。
今回は、久しぶりに認知症についての話題をとり上げたいと思います。
今回のテーマは「帰宅願望」。
帰宅願望というと、本人の意思に反して病院や施設に入れられた時に出るものというイメージを持っている方もいるかもしれませんが、人によっては自宅にいるにもかかわらず、「家に帰りたい」と訴える人もいます。
この状態の時にご本人に「ここは自宅だよ」と説明しても納得されないということもよくあります。
では、このような帰宅願望は、なぜ起こってくるのでしょうか、その原因についてみていきたいと思います。
帰宅願望の原因
記憶障害や見当識障害の影響
記憶障害や見当識障害があると
- 自分がどこにいるか認識できない
- 周囲の人の顔に見覚えがない
- 時間がわからない
など自分が置かれている状況が理解できなくなります。
いきなり知らない場所にいて、周りは知らない人ばかりという状況を想像してみてください。
きっと不安に駆り立てられるでしょう。
認知症になるというのは、常に不安を抱えている状況です。
帰宅願望は、不安の現れであり、安心できる場所に行きたいという願望からくるといわれています。
では、なぜそれが自宅にいておこるのでしょうか?
認知症になると過去の記憶と現在の状況が混乱することがあります。
特に、過去の若い頃の自宅の記憶と現在の状況が混じり合い、今の住まいを「家ではない」と感じてしまうことがあるのです。
ご本人の中では、子どもの頃の家が自宅という認識になっているのです。
環境や人間関係の影響
病院への入院や施設への入居など、環境の変化がある場合も要注意です。
認知症の方は、環境の変化にとても敏感です。
自分のいる場所が変わったり、関わる人たちが変わったりすることで、
安心感が失われ、不安を感じやすくなります。
- 居心地の良い落ち着ける場所がない
- 周囲の人と合わない
- 周りとうまくかかわれない
などと感じ、帰宅願望につながります。
これは、同じ病院や施設内で単にお部屋が変わっただけでも起こってきます。
場合によっては、自宅で模様替えをしただけでも「自分の家に帰りたい」ということを言ったりします。
自分がいる場所が同じであっても、関わる人たちの様子でも変わってきます。
たとえば、周囲の人が慌ただしく動き回るのを見ただけで気持ちが不安定になってしまうのです。
夕暮れ症候群
「夕暮れ症候群」は、主に認知症を患っている高齢者に見られる現象です。
一般的には夕方から夜にかけて不安、混乱、攻撃的な行動、または興奮状態が増加することを指します。
これは、患者が日の出と共に覚醒し、日没と共に眠るという生体リズムの変化、またはその他の要因によるものと考えられています。
この時間帯は、
「家に帰ってご飯を作る」
「子どもを迎えに行く」
など、さまざまな理由から家に帰りたいと訴えるケースが増えます。
帰宅願望への対処法
帰宅願望の根底には不安があります。
そのため、その対処は本人が感じている不安や混乱を和らげ、安心感を与えることが中心となります。
帰宅願望は、単に「家に帰りたい」という物理的な意味だけでなく、「安心できる場所に戻りたい」「家族や過去の思い出がある場所にいたい」という心理的なニーズが反映されていることが多いのです。
帰宅願望に対処するための具体的な方法についてお伝えしていきます。
1. 本人の気持ちに寄り添う
帰宅願望を訴える人に対して、まずはその気持ちに寄り添う姿勢が大切です。
そのためにも「否定する」ということはNGになってきます。
本人が「家に帰りたい」と言った場合に、「ここがあなたの家ですよ」などと現実を否定してしまうと、混乱や不安がさらに強まることがあります。
次のような対応を心掛けましょう。
- 共感を示す
「家に帰りたい」という訴えに対して、「家に帰りたいのですね」「懐かしい場所が恋しいですね」と共感を示し、まずは本人の気持ちを理解していることを伝えます。
- 安心感を与える
その後、優しく落ち着いた口調で「ここも安全な場所ですよ」「もう少しここにいてから、家のことを考えましょう」など、安心感を与える言葉を使います。
否定するのではなく、本人を安心させることが重要です。
2. 注意をそらす
帰宅願望が強くなる場合、本人の注意を他のことに向けることで、不安や混乱を和らげるというのも一つの方法です。
趣味や好きな活動、リラックスできる環境を提供することで、ご本人の気持ちが落ち着いてくるかもしれません。
- 話題を変える
「そういえば、○○の話をしたことがありましたね」と、家に帰る話題から離れ、過去の楽しい思い出や興味のあるトピックについて話しをしてみましょう。
それによって、ご本人の関心が別の方向に向いてくるかもしれません。
- 軽い活動を提案する
「少しお茶でも飲みましょうか」「散歩をしてみませんか」など、軽い活動や休息を提案することが効果的なこともあります。
これにより、不安な気持ちが和らぎ、帰宅願望を忘れることもあります。
3. 安全な環境を提供する
帰宅願望が強い場合や、実際に家を探して徘徊してしまう場合、ご本人が安心できるように環境を整えることが重要です。
安全な環境作りと同時に、認知症の人が安心感を持てるような工夫が必要です。
- 慣れた持ち物を活用する
認知症の方が自宅だと感じやすくするために、写真、家具、愛用している物など、本人にとって安心感を持てるものを配置します。これにより、安心感を得やすくなります。
- 部屋や家のレイアウトを整える
自宅の中であっても、慣れ親しんだレイアウトや日常生活の流れを守ることが、帰宅願望を和らげる助けになります。
部屋の照明を明るく保ち、視覚的に不安感を与えないようにしましょう。
- GPSやセンサーの活用
徘徊が心配される場合には、GPS機能付きのデバイスやセンサーを活用することも有効です。
これにより、もし外に出てしまった場合でも早く対応でき、安全を確保できます。
4. 規則的な生活リズムを整える
帰宅願望は、夕方や夜に強くなることがよくあります。
規則正しい生活リズムを保つことで、日中の活動量を増やし、夜間にリラックスできる環境を整えることが効果的です。
- 日中の活動を増やす
日中に散歩や軽い運動を取り入れ、活動量を増やしましょう。
夕方以降の不安や混乱を軽減できます。
また、日光を十分に浴びることも体内時計のリズムを整え、帰宅願望を和らげる効果があります。
- 夜間のリラックス時間を確保する
夕方から夜にかけては、テレビや騒音の少ない環境にし、ご本人がリラックスできるよう心がけましょう。
音楽やアロマなどを活用して、リラックスできる雰囲気を作ることも効果的です。
5. 家族や介護者がストレスを抱えないようにする
帰宅願望に対応する家族や介護者にとって、この状況は大きなストレスとなることがあります。
そのため、家族や介護者自身のストレス管理も重要です。
以下のような支援を活用することも考慮しましょう。
- レスパイトケアの利用
介護者が少しの間休息を取れるように、短期間の施設利用やデイサービスなどのレスパイトケアを活用することも検討しましょう。
これにより、家族の負担が軽減され、気持ちに余裕を持って対応できるようになります。
家族の気持ちにゆとりができることは、ご本人の安心感につながります。
- 家族や友人との連携
介護は一人で抱え込まず、家族や友人、地域の支援ネットワークと協力して行うことが大切です。
相談できる相手がいることで、帰宅願望に対する対処も冷静に行えるようになります。
6. 医療や専門家のサポートを受ける
帰宅願望が強く、家庭内での対応が難しい場合や、徘徊が頻繁に起こる場合には、医師や介護の専門家に相談することが大切です。
- 医師の診察を受ける
医師に相談することで、帰宅願望や徘徊が他の病状(不安障害、うつ病など)と関連しているかどうかを確認することができます。
また、必要に応じてお薬を使うこともありますが、まずはお薬を使わない方法を提案します。
- 専門家のアドバイスを受ける
ケアマネジャーや介護施設のスタッフ、ソーシャルワーカーなどの専門家に相談することも大切です。
帰宅願望に対する具体的なケアプランを提案してもらうことができます。
特に、環境の整備や日常生活のリズムの調整についてのアドバイスが役立ちます。
帰宅願望を理解する重要性
帰宅願望は、認知症の方が抱える心理的な不安や混乱の表れです。
物理的に「家に帰りたい」ということよりも、安心できる場所に戻りたいという気持ちが根底にあります。
そのため、帰宅願望に対する対応は、本人の気持ちに寄り添い、安心感を提供することが最も重要です。
家族や介護者が無理をせず、適切な支援を受けながら対応することで、より穏やかな環境を作ることができます。
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