認知症における身体拘束ゼロはどこまで徹底すべきなのか

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認知症における身体拘束ゼロはどこまで徹底すべきなのか

2023/07/17

認知症における身体拘束ゼロはどこまで徹底すべきなのか

この疑問に関しては、当然できる限り全ての人にというふうに思う方も多いかもしれません。

まず現時点で、認知症の方への身体拘束がどのような扱いになっているのかですが、

介護保険の施設の設置基準として、「身体拘束の原則禁止」が明記されています。

ただ、入居者の方の行為に「切迫性」「非代替性」「一時性」の3要素が認められたとき、

身体拘束は許されています。

 

 

  • 切迫性

利用者本人または他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高い

  • 非代替性

身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がない

  • 一時性

身体拘束その他の行動制限が一時的であること

 

この3つをすべて満たし

かつ

その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由、その他必要な事項を記載する必要があります。

そのため、施設では

「身体拘束はしない」というか「身体拘束はできない」という前提でスタッフは働くことになります。

当然、そのため人数が少ない中、働いているスタッフは大変になるわけですが、

あくまで介護される方の人権を守るためにできている法律なので、

その議論はいったん置いておきたいと思います。

ここで、提起したいのが、身体拘束をしないことが本人のためになっているのか

ということについてです。

認知症の方が転ぶリスクが高いことについては知っている方も多いかと思いますが、

歩行障害、注意障害、自分の身体能力の把握が不十分なことなどが重なり、

毎日のように転倒されるかたも珍しくありません。

人によっては、顔が真っ青になっていたり、

度重なる転倒で骨折を繰り返して、複数個所ギプスをしている

という方もいらっしゃいます。

とはいえ、

身体拘束は原則禁止

少なくとも付きっ切りでそばにいるとき以外は常に転倒のリスクはあるわけですから

身体拘束が一時的ですむというはずもありません。

つまり、身体拘束はできない状況というわけです。

 

ということは、その方はこれからも骨折する可能性が高いわけです。

おそらく、今後、ADLが低下し、自分一人では動けないという状況になるまで、

転倒のリスクが減ることはないでしょう。

自宅で認知症の方の介護経験がある方なら分かるかもしれませんが、

24時間本人につきっきりでいて、転ばないようにするというのは

現実的に無理があります。

センサーなどを利用することで、転倒のリスクを減らす努力をしているところもありますが、

それも限界があります。

 

そこで表題の疑問です。

何が正解かという答えのないものではありますが、

転倒や骨折のリスクが高いことを承知の上で、

身体拘束をしないことは本人のためになるのかどうなのか?

まぁ、本人の立場からすれば、そういう状況であっても拘束は嫌がる方も多いので、

身体拘束されたくないと思っているのかもしれません。

身体拘束をしないことが本人の意思を尊重していると考えるのか、

身体拘束をしないことで何度も骨折するという痛い思いをさせるのはかわいそうと考えるのか、

身体拘束をしないことで骨折して逆にADLを落とすことにつながるのではないかと考えるのか、

まぁ、どれが本人にとってよいのかよく分からないというのが正直なところです。

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