感情カウンセリングを癌の患者様にお勧めしたい理由 その4
2019/12/25
感情カウンセリングを癌の患者さまにお勧めしたい理由
私は消化器癌の治療を長年しておりました。
患者さんの中には癌と聞いただけで、絶望的な気持ちになる方もおられるのではないでしょうか?
癌といってもいろいろな種類があります。
できた部位によっても違います。
進行度によって治療も変わります。
手術で治るもの、進行が遅いもの、根治が難しいと言われるものもあります。
ですからまずはしっかり担当される医師と現状を把握し合っていきたいものです。
しかし、実際の医療現場にいると医師と患者さんとのコミュニケーションがうまくとれていないのではないかと思うことがありました。
告知の時は、感情的になったり、周りが見えなくなってしまったり、周りの言葉が耳に入らなくなったり、周囲とぶつかってしまったりすることもあるでしょう。
感情に翻弄されている時ほど孤独なことはありません。
いち早く自分の感情を整理して自分の人生を進ませていきたいものです。
私の経験した患者さまの例をご紹介していきますね。
50代の男性の方 進行膵臓癌
会社の健診で血液検査の数値で黄疸があり、腹部CT検査をしたところ膵臓癌が発見されました。告知の段階で手術はできない状態で抗がん剤治療をすることが話されていました。
それまで彼は毎年のように健診を受けており、特に異常は指摘されず、本人も健康そのものだと思っていたのでした。
会社では周囲を取りまとめる役割を担っており、中心となってプロジェクトを進めていく方だったようです。
彼は告知の段階では自分は癌であるはずがないとこちらの話に耳を傾けず、一向に話合いができませんでした。
病室にも仕事を持ち込み、今はかかりきりで忙しいとはぐらかしてしまいます。
仕事を持ってくるように頼まれた部下がそばで困惑した表情をしていました。
仕事が第一であった人にとって、仕事ができなくなるかもしれないことは大きな不安です。自分の居場所がなくなるように感じるかもしれません。精力的に頑張ってきたことが自分から消えてしまうような喪失感を持つかもしれません。
また、自分が働かないことによる家計の負担なども気にかかるでしょう。
家族に迷惑をかけたくない。会社に迷惑をかけたくない。そのような思いも出てきます。自分がなんともないと周りにアピールしたくもなります。
特に日本人は弱音を吐くことがいけないと思ったり、周囲に迷惑をかけてはいけないという思いが強いのです。
しかし、このような状態では周りも困惑してしまいます。無理してやろうとしている仕事だって身に入らないのではないでしょうか?
収まりきらないこの思いをなんとかするにはやはり自分と向き合う必要があります。たった一人で向き合うには辛いことも多いでしょう。どんどん孤独にな気持ちになるかもしれません。
ですから私たちは、患者さまが自分の感情と向き合うサポートが必要であると考えています。感情カウンセリングは感情を誰にぶつけることもなく、自分のこれからをじっくりと見直す時間です。感情に翻弄されず、今の状態を冷静にみつめ、自分なりの答えを出すことができます。
仕事ばかりの人生から自分の本当の人生と向き合う時間に変わっていくかもしれません。