アドバンストケアプランニングで大切な家族の心理的負担を軽減する
2024/10/01
目次
アドバンストケアプランニング(ACP)とは
こんにちは、ヘテロクリニックの木ノ本です。
突然ですが、ご自身の最期について考えたことはありますか?
「縁起でもないことは口にしない」という風習のためか、人生の終わり方について家族と話し合ったことがない方は多いようです。
その結果、最期の迎え方を子どもたちに委ねるケースがほとんどです。
大切な家族の死に関する決断をすることの厳しさについて、考えてみてください。
自分の決断が親の今後を左右するという心理的負担は非常に大きく、決断までに時間がかかる人も少なくありません。
さらに、ご本人の意思が不明な場合、その決断の難しさは計り知れないものとなるでしょう。
場合によっては、家族間で意見が食いちがうこともでてくるでしょう。
アドバンストケアプランニング(ACP)は、将来、あなたが病気やけがで自分の意思を伝えることが難しくなった場合に備えて、あらかじめ医療やケアに関する希望を決めておくプロセスです。
これにより、ご自身が望むケアを受けるだけでなく、大切な家族が終末期の難しい決断を迫られることなく、安心して支えることができます。
ACPを通じて、自分の最期について事前に考え、家族と話し合うことで、心理的負担を軽減し、あなたの意思が尊重される環境を整えることができます。
人生の重大な決断ということで、難しく考える方もいらっしゃると思います。
よく一度決めたら変えてはいけないと考える方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。
人との関わりや環境の変化、ご自身や家族の体調の変化などによって、どうしたいのかが変わるのは当然のことです。
ご自身が人生の中で何を大切にしているのか、どんなことで迷っていたのか、その過程がみえるだけでも決断を任された人たちの助けになってきます。
ACPを始めるタイミング
アドバンストケアプランニング(ACP)を始めるタイミングは、必ずしも病気や高齢に伴うものだけではなく、健康なうちから考え始めることが理想的です。以下のような状況がタイミングの目安となります。
1. 健康なときに話し合いを始める
最も理想的なのは、まだ健康で元気な時期にACPを進めることです。将来の不測の事態に備えて、早めに考えておくことで、急な判断を避け、落ち着いて家族と話し合う余裕が生まれます。
2. ライフステージの節目
大きな人生の節目、たとえば結婚、子どもの誕生、退職、引っ越しなどのタイミングも、ACPを始める良い機会です。こうした変化に伴い、将来の医療やケアについて考えるきっかけとなることが多いです。
3. 慢性的な病気や加齢による健康状態の変化
持病がある場合や年齢と共に健康状態が不安定になり始めた場合は、ACPを進める重要なタイミングです。病気が進行する前に、どのようなケアを望むかを決めておくことで、医療者や家族とのコミュニケーションが円滑になります。
4. 家族や身近な人の病気や死を経験したとき
家族や友人が病気になったり、終末期を迎えたりする経験は、自分自身のACPを考えるきっかけになります。身近な人の経験を通じて、自分もどのようなケアを受けたいかを現実的に考えることができます。
5. 医療的な介入が必要になる前に
緊急時に家族や医療者がどのような判断をするのかがわからないと、余計なストレスを与えることになります。ACPをあらかじめ進めることで、治療やケアについての意思が明確になり、緊急時にも迅速かつ適切な判断ができるようになります。
ACPは、いつ始めても遅すぎることはありませんが、早めに取り組むことでより安心して未来を迎えることができます。
家族や医療者と話し合うタイミングを逃さず、計画を進めることが大切です。
ご自身だけだと難しい場合は、当院をご利用ください。
健康な時にACPについて考えるメリット
健康状態に関係なくアドバンストケアプランニング(ACP)を考えることには、多くのメリットがあります。健康なうちにACPを進めることは、将来の安心を確保し、家族への負担を軽減するための重要なステップです。以下に、その主なメリットを説明します。
1. 自分の意思が尊重される
健康な状態のときにACPを進めることで、自分がどのような医療やケアを望むかをはっきりと決めておくことができます。将来、病気や事故で自分の意思を伝えることが難しくなった場合でも、あらかじめ伝えた希望が尊重され、あなたの意思に沿った治療やケアを受けることが可能になります。
2. 家族への心理的負担を軽減できる
最期の決断を家族に委ねることは、大きな精神的負担になります。自分の意思が不明な場合、家族はどのような決断をするべきか迷い、後悔や葛藤を抱える可能性があります。ACPを事前に話し合っておくことで、家族は自分の決断に対する不安や迷いを軽減し、安心して支えることができるようになります。
3. 医療者とのコミュニケーションが円滑に
健康な状態でACPを進めると、医療者とのコミュニケーションがより円滑になります。自分の希望を明確に伝えておくことで、緊急時にも適切な医療対応が期待でき、意思に反する治療が行われるリスクが減ります。医療チームもあなたの希望に基づいたケアを提供しやすくなります。
4. 不測の事態への準備ができる
事故や急な病気など、予期せぬ事態は誰にでも起こり得ます。ACPを健康なうちに進めておけば、突然の病気やけがで意思表示ができなくなった場合でも、自分の意志を尊重した対応が可能になります。事前に準備をしておくことで、未来への不安が減り、安心して日々を過ごすことができます。
5. 冷静かつ客観的な判断ができる
健康状態に問題がないときは、冷静に自分の医療やケアに関する希望を考えることができます。病気やケガが進行しているときには、感情的になりやすく、冷静な判断が難しくなることがあります。健康なときにACPを進めることで、落ち着いて自分の価値観や希望を反映した選択が可能になります。
6. 自分と向き合う時間を持てる
ACPは、人生の終わりについて考えるきっかけにもなります。普段は避けがちなテーマかもしれませんが、ACPを通じて自分の価値観や大切にしていることに向き合う時間を持つことは、今後の人生を豊かにするための大切なステップです。
7. 人生設計の一環として計画を立てられる
ACPは、将来の医療やケアだけでなく、全体的な人生設計の一部と捉えることができます。健康なうちに、どのように最期を迎えたいかを考えることで、人生の大切な選択肢や価値観を明確にし、今後のライフスタイルや計画に役立てることができます。
ACPを健康なときに進めることで、将来への安心感が得られ、家族や医療者とのコミュニケーションがスムーズになり、予期せぬ事態にも適切に対応できるようになります。
ACPで決めておくべきこと
アドバンストケアプランニング(ACP)では、将来の医療やケアに関する希望をあらかじめ明確にしておくことが重要です。
特に、自分で意思決定ができなくなった場合に備えて、以下のような具体的な事項について考え、家族や医療者に伝えておくことが大切です。
ご自身の重要な決定を大切な方たちに委ねることは、相手のことを真剣に思っているほど荷が重いものです。
苦しめたくはないけど死んでほしくもないという思いの中、葛藤する人たちもたくさんいます。
場合によっては、家族間で意見が分かれるときもあるでしょう。
ここでは、ACPで決めておくべき主要なポイントを詳しく説明します。
延命治療に関する希望
残念ながら誰にでも死は訪れます。
そういう状況に近づいたとき、命を存えるための治療(延命治療)を受けるかどうか、またどのような状況で受けたいかを考えておくことは重要です。
以下の選択肢を含めて、自分の希望を具体的に考えてみましょう。
• 人工呼吸器の使用
自発的に呼吸ができなくなった場合に、人工呼吸器を使用するかどうか。
• 心肺蘇生法(CPR)の実施
心停止や呼吸停止が起こった場合に、心肺蘇生を希望するかどうか。
• 栄養補給や水分補給
経口摂取が困難になった場合、経鼻栄養や点滴を使って栄養や水分補給を受けるかどうか。
治療に関する優先順位
医療は進歩してきましたが、全ての病気を治すことはできません。
回復が難しい病状に陥った場合、どのような治療を優先するかも決めておくことは重要です。
たとえば、延命措置を最優先とするのか、それとも生活の質(QOL)を重視するのかということです。以下の観点で検討します。
• 生活の質(QOL)の優先度
延命ではなく、生活の質を保ちながら過ごしたい場合、どの段階で治療を止めるかを決めておきます。
• 積極的治療 vs 緩和ケア
積極的に治療を受ける期間と、治療をやめて緩和ケアに移行するタイミングをどう判断するか。
緩和ケアの選択
治療の目的が病気自体を治すことではなく、痛みなどの苦しみをとること(苦痛緩和)にシフトしたとき、緩和ケアをどのように受けたいかも重要です。
痛みや苦痛を取り除くために、どのようなレベルの緩和ケアを希望するかを事前に考えておきましょう。
• 痛みの管理
どの程度の痛み緩和を優先するか。
痛みを完全に取り除くことを優先するのか、意識を保ちながら痛みを軽減するかなど。
• 自宅でのケアか病院でのケアか
自分がどのような環境で最期の時間を過ごしたいか。
自宅で過ごすことを望むのか、病院やホスピスでのケアを望むのかなど。
代理意思決定者の選任
自分で意思表示ができなくなった場合に、誰が医療に関する決定を行うかを選んでおくことはとても重要です。
この人を「代理意思決定者」または「代理人」と呼びます。以下の点を考慮して、信頼できる人を選びましょう。
• 信頼性
自分の意思を正しく理解し、困難な決断をする場面で自分の希望を尊重してくれる人物を選ぶことが重要です。
• 医療知識
医療的な内容に関してある程度理解している、または医療者としっかりコミュニケーションが取れる人物が望ましいです。
• 感情的負担
家族の中でも感情的な負担が大きくない人を選ぶことが、冷静な判断を期待できるかもしれません。
臓器提供や献体の意向
ACPでは、死後の臓器提供や献体についての意向も確認しておくことが推奨されています。
もし臓器提供や献体を希望する場合は、その意思を家族や代理人に明確に伝えておくことが必要です。
• 臓器提供
臓器提供を希望するか、どの臓器を提供するか、またどのような状況で提供するかを決めます。
• 献体
医学の発展に貢献するための献体を希望するかどうか、またどの機関に献体を希望するかを選びます。
介護や生活支援の希望
人生の最期を迎えるどこかのタイミングで、健康状態が悪くなり、誰かのサポートが必要になることがあります。
そのため、医療ケアだけでなく、日常生活のサポートについても考えておくことが大切です。
どのような生活支援や介護が必要か、どのレベルの介護を希望するかを決めておきましょう。
• 自宅介護 vs 施設介護
自宅で家族や介護者のサポートを受けるのか、それとも施設でのケアを希望するのか。
• 介護者の選定
家族にどこまで介護を任せるか、また外部の介護サービスをどの段階で利用するかを考えます。
財産や遺産の整理
医療やケアに関連する以外にも、ACPの一環として、財産や遺産の整理をしておくことも重要です。
遺言や相続に関する希望を事前に明確にしておくことで、家族間のトラブルを避けることができます。
• 遺言の作成
法的効力を持つ遺言書を作成し、財産分配や遺産の管理について明示しておく。
• 葬儀や埋葬方法の希望
葬儀や埋葬方法について、どのような形式を希望するかを伝えておく。
ACPについて家族と話し合うときのポイント
アドバンストケアプランニング(ACP)はデリケートな話題です。
そのため、家族と話し合うときも慎重かつ丁寧に進める必要があります。
家族とACPを話す方法を段階ごとに詳しく説明します。
タイミングの選び方
ACPについて話し合うタイミングは非常に重要です。
家族がリラックスしている時や、ストレスが少ない状況を選びましょう。以下のようなタイミングが適しています。
• 家族行事やライフイベントの後
結婚、子どもの誕生、退職などのライフイベントの後は、家族で将来のことを考える機会が増え、話しやすくなります。
• 医療チェックや健康診断後
自分や家族の健康に関心が高まる時期には、将来のケアについて話すきっかけが生まれやすくなります。
• 身近な人の病気や死の経験後
家族や友人の病気や死をきっかけに、自分たちもACPについて考えることができます。
話題の切り出し方
ACPの話題を切り出すのは難しいものです。
穏やかなトーンで、無理なく自然に話を進めることが大切です。
ここにいくつかの切り出し方を紹介します。
• 他人の経験を例に挙げる
たとえば、家族や友人がACPを進めている場合、その話を共有し、「私たちも話し合っておいたほうがいいかも」と提案する。
• 自分の気持ちを伝える
「私がもし病気になって、自分の意思を伝えられなくなったらどうなるか考えている。家族が迷わないように、話し合っておきたい」と、自分の考えや不安を率直に伝える。
• 資料や記事を共有する
ACPについての記事やガイドラインを見せ、「こういうのを見たんだけど、話してみたほうがいいかも」と、資料をきっかけにする。
ACPの目的を説明する
家族にACPの目的を理解してもらうことは重要です。
ACPは「死に向き合う話し合い」ではなく、「未来の安心を得るための準備」であることを強調しましょう。
家族が心理的に負担を感じないように、以下の点を説明すると良いでしょう。
• 自分の意思を尊重してもらうため
将来、医療やケアの選択を自分で決められなくなった時に、家族が迷わないように、自分の希望を事前に共有することが大切だと伝えます。
• 家族の負担を軽減するため
家族が最終的な決断を迫られると大きなストレスになるため、それを避けたいという意図を説明します。
• 緊急時の安心感を持つため
将来、何が起きるかわからない中で、事前に話し合っておくことで、家族全員が安心して生活を続けられることを伝えます。
家族の意見も尊重する
ACPは個人の意思を伝えるだけでなく、家族全員が納得できるように進めることが大切です。
家族の意見をしっかり聞き、お互いの理解を深めるよう心がけましょう。
そうすることで将来的にスムーズな決断が可能になります。
• 質問を受け入れる
家族からの質問や不安をしっかり受け止め、誠実に対応するようにしましょう。
疑問点があれば一緒に調べたり、医療者に相談するなどして解決します。
• 感情的な反応にも対応する
ACPの話し合いは時に感情的になることがあります。
その場合、冷静に相手の感情を理解し、無理に話を進めず、時間をかけて少しずつ進めていきましょう。
具体的な内容を話し合う
家族との基本的な話し合いが進んだら、具体的な内容についても少しずつ共有していきます。
以下の項目を一つずつ話すことで、家族が理解しやすくなります。
• 医療の希望
延命治療や緩和ケアに関する自分の考え方を伝え、家族と意見を共有します。
• 代理人の選定
意思決定ができなくなった場合、誰が自分の代わりに医療的な決断をするかを話し合います。
• 死後の希望
臓器提供や葬儀の希望についても、家族と話し合い、共有しておきます。
定期的に話し合いを継続する
一度話し合いが済んだからといって、それで終わりではありません。
ACPは長期的なプロセスであり、状況や価値観が変わるたびに、家族との話し合いを更新することが大切です。
• 定期的な確認
年に一度や、家族イベントの際に、ACPの内容を再確認し、変更点があれば共有します。
• 書面で残す
家族との話し合いを記録しておき、必要であれば正式な書類(リビングウィルなど)を作成することも検討します。
専門家のサポートを利用する
話し合いが進まない場合や、家族が納得しにくい場合は、専門家のサポートを利用することが有効です。
• 医療者との面談
医師や看護師などの医療者に同席してもらい、専門的なアドバイスを受けながら話し合いを進めることができます。
• ACPのコーディネーターやカウンセラー
ACPに詳しいコーディネーターやカウンセラーがサポートしてくれるサービスもあります。
感情的な問題や理解の食い違いを調整するために利用するとよいでしょう。
これらのステップを通じて、家族とACPについて話し合うプロセスがスムーズに進みます。
焦らず、少しずつ進めることが重要です。
ACPに関わる書類や法的側面
アドバンストケアプランニング(ACP)は、
書類や法的な側面などを整えておくことで意思決定が確実に尊重されるために重要となってきます。
それによって、自分の希望を適切に反映させ、家族や医療者が迷わず適切な対応ができるようになります。
ACPに関わる主要な法的なポイントを詳しく説明します。
1. リビングウィル(事前指示書)
リビングウィルは、将来、自分が医療的な意思決定を行えなくなった場合に備えて、
自分の希望する医療内容やケアの選択肢を文書で明示しておくものです。
リビングウィルには、以下のような内容が含まれることが一般的です。
- 延命治療に対する意向
人工呼吸器や心肺蘇生、人工栄養など、延命措置をどのように受けるか、または受けたくないかを記載します。
- 緩和ケアの希望
痛みや苦痛を取り除くための治療をどの程度受けたいか、
またどのようなレベルのケアを希望するかを明確にします。
- 死後の措置
臓器提供の意思や葬儀、埋葬に関する希望もリビングウィルに記載することができます。
法的効力
リビングウィルは意思を文書で残すものですが、法的効力は国や地域によって異なります。
日本では、リビングウィル自体に法的効力はありませんが、家族や医療者との話し合いの指針として活用され、意思を尊重するための重要な文書となります。
2. 代理意思決定者(医療代理人)の指名
自分で医療的な意思決定ができなくなった場合に、
代わりに決定を行ってくれる「医療代理人」をあらかじめ指名しておくことができます。
これを「代理意思決定者」や「医療代理人」と呼びます。
医療代理人を指名しておくと、
リビングウィルに記載した意思が明確でない場合でも、
自分の意思を代弁して医療者に伝えてもらえます。
- 選定方法
通常、信頼できる家族や友人を選ぶことが多いですが、医療知識があるかどうかは重要ではありません。
医療者としっかりとコミュニケーションを取り、自分の意思を尊重してくれる人物を選ぶことが大切です。
- 法的な手続き
代理人を指名するためには、正式な書面(医療委任状、または医療代理委任状)を作成し、署名を行う必要があります。
これによって、代理人は法的に認められた立場となり、医療者との話し合いに参加できるようになります。
法的効力
日本では、代理意思決定者に法的効力を与えるためには「任意後見制度」を活用することができます。
任意後見契約を結ぶと、認知症や病気などによって意思能力が失われた際に、指定した代理人が法的に決定を行う権利を持ちます。
3. 尊厳死宣言書
尊厳死宣言書は、延命措置を拒否し、自然な形で死を迎えることを希望する際に作成する文書です。
この宣言書は、具体的にどのような状況で延命治療を行わないか、
また自然な死を受け入れるかについて明示します。
- 延命治療の中止
尊厳死宣言書には、延命治療を中止する条件や状況(回復が見込めない場合、生命維持装置の使用など)について記載することが一般的です。
- 家族の役割
家族や代理意思決定者に、この意思を代弁してもらうことが重要です。
また、家族がその意向に反対しないよう、事前にしっかり話し合っておくことが大切です。
法的効力
尊厳死宣言書も、リビングウィルと同様に法的効力が日本では強制されていませんが、医療者に対する明確な意思表示として役立ちます。
医療機関によっては、この文書に基づいて治療方針を調整することがあります。
4. 任意後見契約
任意後見契約は、将来、自分の意思能力が失われた際に備えて、
事前に後見人を選び、その人物に財産管理や医療・介護に関する決定を委任する契約です。
この契約を結ぶことで、自分が意思表示できなくなった際も、
信頼できる人が代わりに重要な決定を行ってくれます。
- 任意後見人の選定
親族や友人、あるいは専門家(弁護士や司法書士)を任意後見人として選ぶことができます。
- 契約内容
財産管理だけでなく、医療・介護の決定についても契約書に明記し、将来のケアに関する具体的な希望を後見人に伝えることが可能です。
法的効力
任意後見契約は、公正証書を作成しておく必要があります。
後見人が法的に認められた権限を持つため、ACPの内容に基づいた医療やケアの決定が法的に実行されることを保証します。
5. 法的書類の保管と共有
作成したリビングウィルや尊厳死宣言書、任意後見契約などの法的文書は、
適切に保管し、必要なタイミングで利用できるようにしておくことが重要です。
文書を作成しただけで満足せず、家族や代理人、医療者にその存在を伝えておくことが大切です。
- 書類の保管場所
自宅のわかりやすい場所や、信頼できる家族に預けるなど、緊急時にすぐ取り出せる場所に保管します。
- 医療機関への提出
かかりつけの医療機関にもコピーを提出しておくと、必要なときにスムーズに意思が反映されやすくなります。
6. ACPに関する法的手続きの定期的な見直し
時間が経つと、価値観や医療に関する考え方が変わることがあります。
ACPに関する法的文書は、定期的に見直して更新することが大切です。
特に、健康状態の変化や家族構成の変化があった場合には、再確認して必要な修正を加えましょう。
ACPにおける法的な側面を理解し、適切な文書を作成・保管することで、自分の意思を尊重した医療ケアが提供され、家族や代理人の負担が軽減されます。
信頼できる専門家や医療者と相談しながら、しっかりと準備を進めましょう。
ACPのサポートツール
ACPを進めようと思っても、自分たちだけではなかなか難しい場合があります。
そういうときに、サポートツールを活用すると計画をスムーズに進めやすくなります。
これらのツールは、ACPの理解や実践を助け、家族や医療者とのコミュニケーションを円滑にする役割を果たしてくれます。
ACPを進めるための代表的なサポートツールについて詳しく説明していきます。
1. ACPガイドブックやリソース資料
ACPの基本的な知識や進め方を理解するには、ガイドブックやリソースが役に立ちます。
こういった資料は、医療機関や自治体、福祉団体、ACPに関する専門機関が提供しており、無料でダウンロードできるものもあります。
資料には、次にあげるような内容が書かれています。
- ACPの概要
ACPの目的やプロセス、進め方の説明
- チェックリスト
どのような内容について話し合うべきか、意思決定を行う際に考慮すべき点を整理するためのリスト
- 質問例や話し合いのヒント
家族や医療者との話し合いをスムーズに進めるための質問例やトピックが掲載されています。
これらのガイドブックを使うことで、自分や家族の意思を整理しやすく、必要なポイントを見逃さずにACPを進められます。
例:
人生会議を行う上でのポイントをお示しするとともに、実際に人生会議で話し合っていただきたい内容例についてまとめられるようになっています。
ACPに関連する資料やリビングウィルの作成サポートが提供されています。
日本語に対応している唯一のオンラインツール。
日本語版のACPガイドラインや文書も提供しています。
ガイド付きでステップを進められるため、初めての方にも安心して利用できるツールです。
ACPに必要なリビングウィルや医療代理人の指定が簡単に行え、これらを日本語で家族や医療者と共有できるのが大きな利点です。
2. ACPチェックリスト
ACPチェックリストは、どのような内容を話し合うべきか、また何を決めておくべきかを体系的に整理するためのツールです。
ACPの重要なポイントを一つひとつ確認できるため、漏れなく意思を整理するのに役立ちます。
一般的には以下のような項目が含まれています。
- 延命治療に関する希望
どの段階で延命治療を希望するか、または中止するか。
- 医療代理人の指名
誰が自分の代わりに意思決定を行うかを明確にします。
- 緩和ケアの希望
痛みや苦痛を和らげるためのケアに対する希望。
- 臓器提供の意思
臓器提供や献体についての希望。
- 死後の希望
葬儀の形式や埋葬方法、遺産整理に関する考え。
ACPチェックリストを活用することで、家族や医療者と話し合う際に具体的なトピックを把握し、効率的に意思を伝えることができます。
3. ACP相談窓口やサポート機関
ACPを進める上で、相談できる窓口や専門家のサポートを受けることも大きな助けになります。
専門家は、ACPの手続きに関してのアドバイスだけでなく、
家族との話し合いの際に第三者としての意見を提供してくれることもあります。
主なサポート機関は以下のとおりです。
- 医療機関内のACP支援コーディネーター
大きな病院や地域の医療センターには、ACPを進めるための専門スタッフが在籍している場合があります。
ACPに関する相談や、具体的な書類作成の支援を受けることができます。
- 介護施設や在宅医療の相談窓口
介護施設や在宅医療を行っている医療機関でも、ACPに関するサポートを行っています。
多くの方のお看取りを経験されているため、終末期ケアや緩和ケアに関して、専門的な視点からアドバイスを受けることができます。
- 弁護士や司法書士のサポート
ACPには法的な側面が伴うため、弁護士や司法書士に相談することで、リビングウィルや任意後見契約など、法的文書の作成や確認を行うことができます。
4. ACPに関するワークショップやセミナー
ACPに関するワークショップやセミナーも、プランニングを進めるために役立ちます。
自治体、医療機関、福祉団体などが主催しており、ACPの基本から具体的な進め方までを学ぶことができます。
また、他の参加者と意見交換をすることで、自分の考えを深めるきっかけにもなります。
- 地域でのセミナー
地域の医療機関や福祉施設が主催するセミナーでは、ACPに関する最新の情報を得ることができ、専門家に直接質問することも可能です。
- オンラインセミナー
時間や場所を選ばず参加できるため、忙しい人でも参加しやすいです。
基本的なACPの知識から、具体的な手続きに関する解説まで幅広いテーマが取り扱われます。
これらのサポートツールを活用して、計画的に準備を進めていきましょう。
ACPについて、いろいろな側面から説明してきました。
健康な時からいざというときのことを考えておくことは重要です。
将来について家族や医療者と話し合うことで、
安心感を得ることができるだけでなく、
そういう事態になった時の家族の心理的負担を軽減し、
自分自身の意志が尊重されたケアを受けられる可能性が高まります。
とはいえ、これらのことをご自身だけで決めるというのが難しい場合もあるかと思います。
主治医がいる方は、ご自身のお身体の状況を把握されている主治医に相談するのが一番ですが、
それが難しい場合は当院でもご相談を承っております。
info@hetero-clinic.com
までご連絡を。
ヘテロクリニックは、自分の身体を自分で守るお手伝いをしています。
お身体のちょっとしたお悩みは、オンライン相談(初回 15分 1,000円)にて気軽にご相談ください。
お申し込みは下記リンクから