ストレスがかかるとお腹はどうなる?(2)
2020/08/06
ストレスがかかるとお腹はどうなる?(2)
緊張して不安なときにトイレに行きたくなる。
悲しい出来事があって食事が摂れなくなる。
腹の立つ出来事があって胃がムカムカするなどといった経験した人はいませんか?
実際、感情的になっている時お腹は通常と異なる動きをします。
では、怒ったときのお腹の動きをみてみましょう。
ある時、楽しく誰かとごはんを食べていたとします。
その場で些細なことで一緒にいた人と口論になりました。
あなたは苛立ちを感じながら早く食事を切り上げようと考え始めます。
この時のお腹は先ほどまで楽しく食事できていたときの胃の蠕動とは異なる動きをし始めます。
食べ物をかくはんしていた胃は攪拌をやめ、痙攣性収縮をします。
いつもならば大きくゆっくりと動いてごはんを攪拌する胃ですが、怒りを感じると細かくピクピクと痙攣し始め食事を消化する役割ができなくなります。
胃が食べ物をうまく押し出すことができなくなり、胃のなかに長時間食べものが止まります。
食事の後も気分が晴れていなければ、ごはんは寝る時も胃の中に残っているでしょう。
すると睡眠中に起きるはずだった波状蠕動も起きません。腸も浄化されないままです。
翌朝胃もたれを感じながら起きることになります。
なんとなく朝起きた時から胃のむかつきを感じたことがある人もいませんか?
怒った時以外、他の感情がおきた時も胃腸の動きは変化します。感情によってその動き方も変化します。
ショックと悲しみにくれている時は胃も腸も動きは緩慢になります。食欲はなくなり便秘がちになります。
失敗できない状況で極度の緊張している時は、腸の動きが活発になります。消化吸収にエネルギーを使っている場合ではないと脳が判断し、早く体内のものを排出させようとします。急にトイレにいきたくなるのはそのためです。
いずれも感情が腸の正常な振る舞いを変えてしまうのです。
もし感情に囚われていたら、食事からうまくエネルギーを得ることができなくなってしまうのです。
どうしてこんなことが起きるのでしょうか?
これは進化の過程が関係します。
長い歴史を見ると人が食べ物にありつくことはなかなか難しいことでした。
農耕が発展する以前の人の暮らしは、主に狩猟です。何千年から何万年もの間、人々は食べ物を得ることにエネルギーを注いでいました。
生活すること自体が自らの危険と隣あわせです。危険な時は消化吸収機能にばかり血液やエネルギーをかけることができません。
逃げる、戦うことにエネルギーを効率よく使うことができるように、恐れを感じた時は体が反応するように進化したのです。
その後長い年月をかけて人の生活は変わりました。現在、食事を得るために命がけになることはまずありません。
しかし、恐れを感じた時のお腹の振る舞いは遺伝子の記憶として残されています。
消化吸収よりも感情に対してどう振る舞うかが重要になってしまっています。
また、感情の感じ方は人によって異なります。
同じ状況下でも、そこまで体に影響がでない人もいれば、大きく影響される人もいます。
すぐにお腹の症状に出やすく長年悩まされる人もいれば、一過性の変化ですむ人もいます。
全然平気な人もいます。
これには幼少期の経験(トラウマ)と腸内細菌の働きが関わります。
これについては8月20日の「幼少期のストレスは大人になって敏感な腸になる?」でお話します。